字体について

渡辺大雅堂で彫った印章・印鑑のサンプルをご紹介します。

お客様にお渡ししました商品はセキュリティーの関係上、掲載出来ませんのでこちらは練習用に彫った物です。
画像は右側が印影(ハンコを押したもの)と左側が手書きの版下のイメージです。
まずは実印のフルネームで「鈴木 誠」さん。3文字です。
丸の中という制限されたスペースに文字を入れるということは、等分して文字を入れると良い訳ではなく
文字の字画、バランスを考慮して文字の流れ(筆意)も活かして配字を行きます。
小篆という篆書でも線の流れのある書体をベースに入れています。

渡辺大雅堂で彫った印章・印鑑の文字サンプル

「幸恵」さん。女性用の実印です。

女性の場合、結婚されますと姓が変わる事が多いので、基本的に独身の方には名前のみをお勧めしています。
横で文字を配字してありますが、印章の場合は縦2行の感覚なので右から左になります
(会社や諸官庁の角印など例外的に左から右に入れる場合もあります)。
篆書は縦長の文字なのでこのように2文字の時は横で入れた方が流線美があり女性向けのように思われます。
実際に女性のお客様に人気があります。

渡辺大雅堂で彫った印章・印鑑の文字サンプル

「友梨」さんです。「友」の左側、「梨」の木の部分の右下が重なりあっています。

文字流れを大切に止めないよう、またクドくならない程度にそのようなデザインを施しています。
そして、このような字画の場合ちょっと上目で足長に文字をもっていくとよりスタイリッシュになります。
渡辺大雅堂で彫った印章・印鑑の文字サンプル

「心華」。これは、講習会用に作ったもので名前ではありません。

「心」は、心臓を表す象形文字で篆書でもその様になります。
2文字でもけして2等分に文字を単純に入れれば良いのではなく、画数によってバランスをとって「心」を少し小さ目に入れました。例えば「田」という文字も等分に配字すると大きく見えます。
渡辺大雅堂で彫った印章・印鑑の文字サンプル

「瑶春」です。これも勉強会用の作品なので「春」は、旧篆書の文字を使用しています。

これで正しいのですが一般的に実用印では、印章新体という「春」と一般の方にも読める字体を使用する事が多いです。
「瑶」も旧字体を使用しています。

渡辺大雅堂で彫った印章・印鑑の文字サンプル

「多樹子」さんです。「子」は小児の形の象形文字です。

女性美を出すイメージで曲線的描いています。全ては美的感覚の世界です。
篆書の書体を基本にそれぞれの文字の調和と洗練さを大切にして文字を入れて、丁寧に彫っていきます。

渡辺大雅堂で彫った印章・印鑑の文字サンプル
余談なのですが・・・
当店で彫った印章・印鑑作品の紹介をしました。
ふと、店主のコレクションのキーホルダーとの関連性を感じてしまいました。
どちらも限られた空間の中でどのように洗練された表現が出来るかでクオリティーが決まると思います。
素材の良し悪しも当然ありますが、ハードは基よりソフトの面での質の高さがそのものの質になってきます。
最近、印章は激安店の出現などで軽んじられている傾向があって残念に思います。
特に実印となれば、契約書に捺印すれば立派に個人の責任が生じます。
軽々しく思っていると大きな落とし穴も存在しています。
ですから、作って頂いたお客様には「大切に慎重にお使い下さい」と商品をお渡ししています。
それだけ、ハンコは大切なものなのです。

ちなみにフレンチキーホルダーと呼ばれるフランスにおいて60年代にブームになったキーホルダーがあります。
一部には、デザイン性に優れたものがあり、ほとんどが60年代に作られた作品ですが、半世紀近くたった今でも人気があって大切に保存されたキーホルダー達が存在します。
物を大切にすること。職人が丁寧に作られた物に対して敬愛と理解を示す事。
一見チープに思っている事が、実はそうでもなく、限りない情熱が注ぎ込まれた逸品が存在すると思います。
画像:右はサンプル用の私が作成した会社実印のサンプルです(株式会社ナゴヤW 代表取締役印)。
そして、画像:左が店主(名古屋のメタルキング)のコレクションから回文を施したAUGIS社製のフレンチキーホルダー「KOUBA」。
ロングディスタンスランナーさん企画の「秋の風物詩 メタルキーホルダーベスト10!2007年版」の第4位にセレクトしました。
どこか当店の思考の共通点もある気がします。

限られたスペースの中の「空間の美学」の世界観です。

渡辺大雅堂で彫った印章・印鑑の文字サンプル